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STAP騒動その2 [STAP騒動]

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2014年4月18日まとめ
STAP細胞の騒動はまだおさまらない。小保方さんの研究指導者である笹井芳樹氏がやっと記者会見に登場した。誰もがしりたい、STAP細胞のあるなしには「STAP現象は最も有力な仮説」という、むづかしいいい方でこたえた。どうやらあると信じておられるようだ。勿論、それは科学的検証が必要ということだろうが、すっきりと素人でもわかる表現ではなかった。でも、あると思っておられるのだろう。記者とのやりとりから、小保方さんがどのような研究をやってきたか、それに笹井さんがどのように関係しておられたかが見えてきた。

まず、小保方さんの研究活動である。下表のとおりだが、2006年に学部を卒業し大学院にすすんだ。博士課程において、ハーバードに留学し、バカンティー教授のもとで研究をし、理研の客員研究員となり、そこで若山さんの指導をうけ、さらに理研のユニットリーダーとなった。もともと工学系の 応用化学であったが、大学院において医科学、発生再生医学の分野にすすんだ。工学系から生物系に転進したが、研究の進展にともなうものであろう。関係する機関が早稲田大学、東京女子医大、ハーバード大学、理化学研究所であるが、それにふさわしい分野に所属している。

笹井氏の指導、論文執筆者
時期笹井小保方ネイチャー
12.春客員研究員不受理
12.12下書き直し客員研究員
13.2実験技術指導、論文改訂客員研究員
13.3Uリーダー投稿
13.4追加実験参加、技術指導Uリーダー
13.9責任著者Uリーダー
14.1Uリーダー公表


小保方氏の専門推移
時期小保方早大東女医大Harvard U理研
~06年学部応用化学
06~08年院修応用化学医科学
08~11年院博、留学医科学医科学発生再生
11年~客員研究員発生再生
13年~Uリーダー発生再生


次にネイチャーに論文を公表するまでの経緯である。論文の作成には次のような四つ段階がある。

1) 実験の計画、企画
2) 実験の実施
3) データの収集、解析、図表
4) 論文の作成

1) は、2008年から2年間ハーバード大学に留学した時期である。2) は理研研究員の時期、2011から13年の時期である。ここで若山さんに指導をうけた。3) も、おなじ時期である。小保方さんは、2012年春ににネイチャーにいったん投稿したが、これは受理されなかった。そこで笹井さんが登場する。笹井さんは、iPS細胞でノーベル賞をうけた山中伸弥氏とおなじ京大の出身である。一時、ノーベル賞を山中さんより先に受賞すると噂されるほど、実績もあり高い評価を得ている人だそうだ。若くして教授に昇進し、理研に転進した。小保方さんは理研のユニットリーダー採用に応募した。笹井さんは人事委員会の委員として採用の面接をした。それが論文指導のはじめだという。この年の春にネイチャーへの投稿が不受理となっていたので、笹井さんは上司の依頼もあり、論文指導にあたることとなった。論文は2013年3月に投稿された。ネイチャーとのあいだに、やりとりがあり、2014年1月の公表にいたるのである。その表が下のとおりである。

論文公表に至る経緯
時期段階指導者nature小保方
08~10企画バカンティ留学
11~13実験若山(11~12)不受理12春理研
11~13解析、図表若山(11~12)理研
12.12~14.1論文作成笹井提出13.313春Uリーダー
14.1公表笹井公表Uリーダー


笹井さんの指導についてもうすこし、見てみたい。

笹井氏の指導、論文執筆者
時期笹井小保方ネイチャー
12.春客員研究員不受理
12.12下書き直し客員研究員
13.2実験技術指導、論文改訂客員研究員
13.3Uリーダー投稿
13.4追加実験参加、技術指導Uリーダー
13.9責任著者Uリーダー
14.1Uリーダー公表


公表にいたる経緯は以上であるが、この研究の画期性は山中さんのiPS細胞と肩をならべると思うが、スキャンダル性はこちらが上だ。会見で記者から不適切な関係があったかと、きかれた、勿論否定されたが、これがネット人気をたかめる要因になったようだ。STAP細胞のあるなしの方がずっと面白いと思うのだが。トカゲの尻尾きりからの再生、プラナリアの胴体を三つにちょん切ったら、頭と尻尾がついた三つの個体が再生する。例えば笹井さんと山中さんの首をちょん切ってそれぞれ相手の胴につなけたらどうか。こちらの方が断然面白いと思うが、一般の関心をあつめない。この騒動はまだまだつづきそうだ。事実があきらかになるまで、見守もればよいのに、そうはならない。どうしてか考える。でもスキャンダルはあつかわない。

わたりあるいた研究

小保方さんは早稲田の大学院に籍をおいたが、東京女子医大の医科学、ハーバード大学の発生再生の分野が本籍であった。そこで研究をすすめ、早稲田で博士号をとった。その後ハーバードにもどることも考えたようだが、理研の客員研究員となった。そこで若山さんに指導をうけたが、それは、2011年の一年間だったらしい。若山さんは翌年に発足した山梨大学のあたらしい研究組織にむかえられることとなった。ネイチャーに投稿された論文の研究は実質、2011年から2013年のものだった。ネイチャーからはいろいろ注文がついたらしい。論文修正や追加実験が必要だった。ここでは笹井さんが指導した。このように複数の指導者のもとで、いわば細切れの指導をうけると、丁寧な指導は期待できない。研究室に所属していれば、そこの同僚、先輩から啓発指導をうける機会があるが、それも充分であるまい。小保方さんは、理研において客員研究員であって、研究員ではない。組織により差があるが、正規の研究員でないことは、大なり小なりハンディキャップとなる。それにユニットリーダーへの抜擢である。風当たりのつよさもうなずける。

研究の画期性

STAP細胞の存在がみとめられたらノーベル賞クラスの評価をうける。これは間違いのないことだと思う。ところがこれを世間の研究者はよろこんで、みとめるか。小保方さんの方法は、オレンジジュースよりすこし酸っぱい酸につけることで、細胞を初期化するという画期的な方法である。こんな簡単な方法、あるいは発想でできるなんてことを従来の研究者はみとめたくない、不都合な真実ではないか。山中さんは「ワクワクする」といった。こんなに素直な気持をもっている人ばかりでない。必ず悪意をもった匿名の人がいる。舌なめずりをして、アラさがしにとりかかるだろう。

結論

結論である。理研は若い才能を発掘し育てようとする意欲と知恵にかけているように思う。

1) 理研は責任を感じなくてもよい
小保方さんは、東京女子医大、ハーバード大で実質的な研究をしてきた、理研では客員研究員にすぎない。若山さんのところに所属したが、その指導はせいぜい、2011年の一年間である。翌年には若山さんは山梨大学に移籍がきまり、その準備におそらく忙殺されていたろう。客員だから、研究室の同僚、先輩による協力指導も濃密なものでなかったろう。でなければ、あのようなずさんな資料の管理、ノートの記録が非難されることもなかったろう。2013年、理研のユニットリーダーとなった以降の研究は論文とは基本的に関係がない。理研はこの事実を明確にすべきである。こんな事情に配慮した小保方さんの受け入れが必要だった。

2) 調査報告書は撤回した方がよい。
ここで、小保方さんの研究不正を認定し、捏造、改竄という研究者の将来を否定しかねない言葉をつかった。ところが、同時に、この騒動の根本であるSTAP細胞の存在のあるなしは、この報告ではあつかわないと明言した。捏造や改竄という重大な事実はSTAP細胞の存在を究明すると同時に判断すべきことである。それを放棄してこのような重大な指摘ができるか。もうすこし法律的な側面もある。研究不正は、研究者の悪意の認定が必要である。ネットの記事から、かって理研で悪意を認定して研究不正とした。これを公表もした。ところが研究者がこれを認めず争いとなった。結局、両者は和解し、この公表の事実は撤回されたそうだ。悪意の事実は裁判で容易に決着のつくものでない。にもかかわらずこの指摘である。何故か。ここですこし、いやなことを、いわざるをえない。

小保方さんは、複数の組織をわたりあるき、強力なバックをもたない。理研においては客員という非力な存在だった。ユニットリーダーに抜擢されたが、まだ一年しかたっていない。すこし軽くみたのではないか。これほど強硬な対応をしてくるとは思わなかった。予想外だった。ここでは若手をそだてようという意欲より、予想外の騒動となったので火消しに奔走する姿がうかんでくる。報告を撤回し無用な混乱を収束させる。世間の若手研究者は息をひそめてみつめている。小保方さんに厳しい指導をおこなうのは、その後である。

3) 発表後の騒動を予測すべきだった。
あとからは何とでもいえる。そういう反論がありそうだが、やはり知恵がたりなかったといわざるをえない。あのような形で若手研究者の論文を公表する必要があったのか。割烹着を小保方さんにきせたり、ピンクの研究室を紹介したり、すでに実績もあり評価のさだまったiPS細胞と比較し、STAP細胞を宣伝した。大袈裟すぎる。香港大学のある教授がSTAP細胞はできなかったが、顕微鏡でつかうプレパラートに細胞をはさんだら多能性のある細胞ができたようだとブログでつぶやいた。これもネットの世界をかけめぐった。この教授は、らしきものができたので、これから事実確認をさらにしてゆく必要があるといった。論文をネイチャーに投稿するつもりはないらしい。

1) わざわざ論文公表を記者発表しない。取材されたら説明をするにとどめる。
2) 論文にしない。それよりパテント取得をにらんで、どんどん実績をつくる。
3) あるいは、内部でさらに実験をかさねて事実を確認する。それをふまえて論文も公表する。

またまた、いやなことをいわねばならない。笹井さんは記者に何度もノーベル賞をとった山中さんへの対抗意識はなかったか、ときかれた。ないと否定しておられたが、どうだろうか。理研が小保方論文に貢献したのは客員時代のせいぜい一年間でないか。東京女子医大、ハーバード大よりおおきかったか。理研は小保方論文の未熟さにそれほど責任を感じる必要もないがリケジョの星と自賛するのもおかしい。特定国立研究開発法人の認定を意識していそいだかもしれない。いずれにしても対抗意識が冷静な判断を狂わせた。小保方さんには気の毒だがその未熟さを見極められなかったと思う。やはり笹井さんの責任はおおきいと思う。

笹井さんがSTAP細胞に真摯にむきあおうとする気持も、小保方さんをおもいやる真情もつたわったが、これからどうするのか。これ以上の混乱はさけてほしい。

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STAP騒動事件簿 [STAP騒動]

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STAP騒動の渦中にある小保方さんのことである。不正認定の再調査をもとめていたが、5月8日、理研がこれを却下した。もうすこし穏やかな対応をすると思ってたので驚いた。小保方さんは、これを容認しない。おそらく裁判であらそわれることとなる。STAP細胞の研究が大切な時期にまた無用な混乱がつづくことになる。残念な成り行きである。

わたしはこれについては、1月末の発表のころには、あまり関心がわかなかったが、スキャンダルめいてきてから、失礼だが面白くなって首をつっこんだ。それでしらべて記事をまとめた。その後も展開がはげしく、その度にしらべて記事をまとめた。それで過去のものから順をおって紹介する。その前に結論である。

1) STAP細胞のあるなしをはやく究明してほしい。
2) 若い才能をつぶさないよう大人の配慮を望む。

STAP騒動その1
Y2014.3.30 まとめ

今年の一月末、驚くべき(という)ニュースがとびこんできた。細胞を酸にひたすという簡単な方法で、iPS細胞のようなどんな組織の細胞にも分化してゆく万能性をもつ、STAP細胞というものをつくりだすことができたという。理化学研究所のユニット・リーダーの小保方晴子氏が成功させた。哺乳類のような高等生物では、トカゲの尻尾の再生はできない、とされてた。ノーベル賞を受賞した京大の山中教授が発見したiPS細胞は、高度な遺伝子操作を必要とする。こんな簡単なことで細胞が万能性を獲得できるとは、予想外のことだ、という。このニュースはたちまち世界中をかけめぐり、大評判となった。世紀の大発見だ、そうだ。小保方さんに注目があつまった。

お歳は、女性に失礼だが三十歳、研究者としては、若い。かわいいアイドルのよう。研究室はピンクやイエローに塗られ、ムーミンの絵がかざってある、そうな。マスコミがとびついた。大騒ぎとなった。理研の星、リケジョの星、こんな天才をAO入試(本人の出願動機を大事にした面接中心の入試)でみつけた早稲田大学はえらい。と、こんなところまで褒められ、高校時代のエピソード、恋愛模様までと、報道が加熱した。

スキャンダル

ところが、二月早々から、論文不備の指摘、内容の疑問がネットに登場しはじめた。だんだん雲行きがおかしくなってきた。大学院時代の博士論文で、二十数ページにわたって、英文が盗用されている、という。恋愛模様もアイドルのスキャンダルのような扱いがでてきた。今までもちあげていたものを、とたんにおとす。掌(てのひら)がえしである。すみませんが、この頃からわたしの興味をひくようになった。だから、当初の様子はあまりしらない。ここで問題を大別する。1) 論文の写真、引用の不備、2) 内容の不備、データ、標本の捏造まで、3) スキャンダル、週刊誌、ネット上の悪意にみちたものまで、こんなものだが、ネットにはさまざまなレベルで多様な情報、記事があふれている。わたしは、3) についてはとくにのべない。 

検証

理研は、内部に調査委員会をたちあげた。三月十四日、中間報告を公表した。写真の流用、証拠となる写真の修正の事実はみとめたが、悪質な捏造などはみとめてない。しかしさらに調査は継続するという。ここでノーベル賞受賞者の野依良治理事長が謝罪するとともに、小保方さんを未熟と断罪した。今は研究が手につかず、謹慎状態だそうだ。科学者の方から、いろいろ意見、批判がでている。マスコミからも、そうだ。行き過ぎを指摘する声もある。データ捏造を示唆するような記事もある。現在は、一年をめどに再現実験の実施もふくめ調査するというのが理研の考えのようだ。これと直接関係がない話しであるが、安倍政権の成長戦略の重要事項に位置づけられる特定国立研究開発法人(「特定法人」ということにする)の指定がある。これにより従来の法律、規則にしばられる、研究者の給与、待遇がアメリカに対抗できるほどのものになるらしい。これが今年度から指定されるはずだったみたいだ。この問題の動向により悪影響があるかもしれない。

STAPとは

まあ、面白い話しだなと思っていみているが、内容を理解しようとせずに話しをするのは、あまりに失礼。生物の専門家でも、愛好家でもないが、勉強した。それで説明する。

まず、哺乳類には40兆から100兆の細胞がある。その種類は250種類ある。発生学の話しである。一番最初は一個の卵細胞、これが成長とともに、手足、頭、胃腸などの組織をつくる細胞に分化する。植物の話しがはいる。接木、挿し木から、その元である樹木となる。動物にはこのような例がない。でも、トカゲの尻尾をきる。またあたらしい尻尾がはえてくる。もっと原始的な動物である、プラナリアでは、たとえば、体を三つに切断する。と、頭と尻尾をもった完全な三つの個体が再生する。こんなことが哺乳類のような高等生物においてもできないか。こんなこわいことを考える人がいる。

事故で手をうしなった人に、あたらしい手をつくってあげる。こんなことができるには、免疫の問題が障害となる。他人の組織をうえつける。植物のようなことをしても、免疫があるので失敗する。ところが自分の細胞をつかって、こんなことができたら、免疫の問題はクリアできる。再生医療の世界はこんなことを、たんなる夢物語にしない段階にきたらしい。iPS細胞は、京都大学の山中伸弥教授らが発見した。同氏は見事にこの業績でノーベル賞を受賞した。

STAP細胞の発見も事実と確認されたら、この程度の発見とみとめられるそうだ。比較する。iPS細胞は、ウイルスをつかって細胞の遺伝子のなかに、何やら新しい仕組みをうえつける。これにより、分化した細胞だったものが、初期化、ようするに卵にもどって、ここから何にでも分化してゆくことができる。これは相当むづかしい技術らしい。ところがSTAPでは、オレンジジュースより、もうすこし、すっぱい程度の酸性度の液につけることで、初期化できる。これでSTAP細胞ができる、という。すばらしい。

細胞が分化してゆくところで、その遺伝子のなかにある、ある仕組みがはたらいて、一定の方向にしか分化しなくなる。ところが何らかの方法で、この仕組みをはずしてやると、とたんに初期化される。すると卵の段階にもどる。だから何にでも分化できる、という考えである。プラナリアやトカゲの再生は、切断というショックをあたえた。こんな外的ショックをあたえると、細胞が初期化される。こんな発想があるようだ。ずいぶん乱暴だと思う。だからこそ誰も思いつかなかった。今頃、切歯扼腕してくやしがってる世界の研究者はおおいだろう。と、同時に本当か、とイジワルな目でアラさがしをはじめる人がでてきても驚かない。すこし補足する。

まず、酸性度だが、オレンジジュースより、すこし、すっぱいという液だが、これでも細胞にとっては、切断と同じくらいショックなんだそうだ。また、細いガラスの管に細胞をおしこむ、という方法もあるらしい。また、簡単といったが、程度問題だ。それほど簡単でない。他の研究者が再現実験をすると、簡単に再現できるものではない。お金も時間もかかる。さらに、その手法を理研が公表したが、それだけでは不十分みたい。まだ明らかにされてないノウハウがあるみたいだ、ちなみに、この手法はWIPO(世界知的所有権機関)に特許出願されている。

論文の検証

いろいろな解説がネット上にあるが、日本未来館、science communicatorの詫摩雅子氏が、われわれのような素人のため立派な解説をしておられる。小保方さんの論文をよみ、その論理を理解し、その過程をたどり解説しておられる。それをつかわせてもらう。

まず、STAP細胞とは、何か。

身体にもともと万能細胞があったわけではなく、
1) いったん分化し終えた細胞が
2) 刺激を受けて初期化され
3) 万能細胞になった

これは、万能細胞としてはES細胞、iPS細胞がある。この可能性を排除してる、ということ。
刺激とは、ここの場合は酸性の液にひたすこと。

という意味である。小保方さんは、これを実験によって実現し、論文でその事実を論証する、というわけである。で、詫摩さんの検証である。

T細胞という白血球の一種(これは分化をおえたもの)がOct4陽性細胞(これは一応万能細胞と考えてよいらしい)に変化した。このことが写真からわかるという。ところが、この写真に切り貼りがある。この核心部分に操作がくわえられたというのである。その理由は写真が明瞭でなかったからという。そのまま不明瞭のものをつかっても、この主張は成立してるようだ。だったら正しい。といいたいが、何か釈然としないという。不正があるという可能性を感じておられるようだ。

万能性の立証では、これは前段階だそうだ。論文では、次の三つの段階をふんで立証する、という。

1) 培養皿上でほかの種類の細胞に分化できるか
2) マウスに移植するとテラトーマ(奇形腫)がつくれるか
この論証では、写真の一部が、まったく違う実験結果の写真と同一であるとみている。だから、詫摩さんは、テラトーマ形成の証拠とみれないとしている。調査委員会は調査中としているそうだ。
さらに、別の写真について、移植後7日目のテラトーマの写真にしては、分化が進みすぎていて、おとなのマウスの組織片の写真ではないか、といった指摘が実名、匿名でネット上にでてると詫摩さんは指摘している。これについては、今回の中間報告ではふれられていないそうだ。

3) 初期の胚(胚盤胞)に入れるとキメラマウスになるか
これは小保方さんが若山山梨大学教授に標本をわたし再生実験を依頼したもの。詫摩さんは論文の写真ではできてると、みとめてる。ところが論文にあるデータではそうでないと指摘してる。ここで憶測すれば、別の標本をわたして、再生させたのではないか、と疑うことができる。ところが、詫摩さんのこのあたりの説明はむづかしい。この可能性に言及してない。

詫摩さんの、ここ時点の結論である。STAP細胞の要件である「いったん分化を終えた細胞」が「刺激を受けて」「万能細胞になった」の最初の部分の証明がされていない。これでは、脾臓にもともとあった別の万能細胞や、何らかの理由で混入したES細胞などである可能性を捨てきれない。きびしいお言葉である。

詫摩さんの説明はもっと緻密なものであったが、わたしがおいかけられないので、この程度にした。詫摩さんがこの論文は撤回しなければならないほどの不備のあるものかどうか。それがしりたいところだ。この後はわたしの推測だ。それなりの論拠で論文が作成されている。しかし、どうも不十分なところがある。というところだ。理研の調査委員会の中間報告の結論も、また同じような考えだと思う。で、どうするが気になる。一応現段階はこれでおわりである。釈然としない、という気持がしょうじるだろう。では、すこしでも釈然とするために、説明をつづけよう。

理研

理研は、1917年に設立された。自然科学全般を対象にして、戦前は関連企業を傘下におさめた巨大コンツェルンだった。理研のワカメをしってる人もおおいだろう。あれは理研の関連企業の製品だった。

ドイツの研究所の話しである。特許でかせげるような研究成果をうみだしたことに、ふれて、これからの一世代は研究ができる、といった。この記事を印象ぶかく記憶している。アメリカのようなはなやかな研究推進とはちがう、地味だが強靭な力を感じさせた。

現代の理研は戦後のGHQにより解体され、研究機関のみの存在となった。しかし大学とはちがう、潤沢な研究費をあたえられ、「研究者の楽園」といわれている、そうだ。あたらしい動きがある。

安倍政権の発足にともない成長戦略が策定された。そこでiPS細胞の研究が重要事項としてとりあげられた。こんな研究を推進するためには研究者の処遇が問題となった。アメリカのように有能な研究者に充分な給与、待遇をあたえるのは、現在の制度ではむづかしいという。そこで特定法人といった制度を創設して、アメリカなみの待遇を実現しようという動きがでた。どうやらこの年度の予算成立をにらんで、理研が立候補し、それを政府が認定するという手筈になってるようだ。この動きは、STAP騒動の動向しだいであやしくなるかもしれない。

研究者のねたみ

研究者は研究をはなれると、むしろ幼稚な側面をもつ人々だという。一般人とおなじように、妬み、嫉みをもつ。まして、厳しい競争にさらされた研究者同士の間にそのような感情がたかまるのもやむ得ないところがある。小保方さんの論文が発表されて、すぐに問題点が指摘された。これを奇異に感じた人がいる。それをウェブ上に発見した。これは相当内部の事情に詳しい者のやったことだ。論文公表のスケジュールをにらんで準備して、公表後ただちに反撃にでた、という。何故それが反撃になるのか、外部の人にはわからない。日頃の鬱憤、不満がたまっているのだろう。きっかけさえあれば、たちまち噴出する。

理系にたいする文系のやっかみもある。一般的に理系は研究費が潤沢で華やかである。伝統をひきずり、論文の体裁、手順にこだわる文系には理系の実利主義、能率主義は理解しにくい。また反発もある。博士論文で小保方さんの引用を口をきわめて非難している。この文化のちがいもあるだろうが、程度がすぎる。また、華やかな活躍をみせる女子アナに対する攻撃のようなものかもしれない。ウェブ上の批判、非難のすべてを学術的なものとだけ、みるべきではない。

特許

この論文が発表される前にすでに国際特許出願され、その内容が公開されている。これを、ある特許事務所が解説してくれてた。

1) 国内出願日、2013年4月24日、米国特許商標庁を受理官庁として国際出願。
2) 出願人は、
a) 米国のTHE BRIGHAM AND WOMEN’S HOSPITAL, INC、
b) 日本のRIKEN(理化学研究所)、
c) TOKYO WOMEN’S MEDICAL UNIVERSITY(東京女子医大)の三者で、共同出願。
従って本願が特許になった場合、特許権はこの三者の共有。
3) 発明者は、
a) VACANTI, Charles A.; (US)、
b) VACANTI, Martin P.; (US)、
c) KOJIMA, Koji; (US)、
d) OBOKATA, Haruko; (JP)、
e) WAKAYAMA, Teruhiko; (JP)、
f) SASAI, Yoshiki; (JP)、
g) YAMATO, Masayuki; (JP)の7名。
この公報からは誰が真の発明者(発明の貢献度)かは不明。
4) 代理人は、RESNICK,Davidという米国マサチューセッツ州に事務所がある特許弁護士のよう。ちなみに米国特許代理人は世界で最も費用が高く、しかもこの出願は明細書だけでも130頁にもおよぶ大作、おそらくこの代理人から出願人には、数万ドルの請求書が送られているだろう。
5) タイトルは、発明の名称。「GENERATING PLURIPOTENT CELLS DE NOVO」、多能性幹細胞の製造方法(仮訳)

理研がこの申請でどれだけ負担したか気になる。論文を撤回すればこの費用は無駄になる。STAP細胞の問題がけっして学術的側面にとどまらない。将来おおきな利益をうみだすかもしれない。上記に登場しする組織、関係者はこの利益に関与する。

どう考えるか

この問題をどう考えるか。まよってしまう。大学教授で武田邦彦という面白い人のはなしである。理研が中間報告をする前日にいっている。

1) ネイチャーで発表されたということは、その論文に新しい価値のある知見があること、その主張が学問的に筋がとおってるということ、である。けっして、それが事実であることを確認されたというものでない。ネイチャーで審査する人は実験をしたわけでも、新しい知見をしってるわけでないから、当然である。
2) ささいな間違いや手落ちを問題にするより、第三者による再現実験が重要だ。もっと一般的にいうと、正しいという事実が確立するのには、おおくの知見の蓄積が必要で、時間がかかるものだ。
3) いわゆる「コピペ問題」は、事実の説明部分でおこなわれた。これは事実を記述する部分であるから、まったく問題ない。

ここについては、引用は、それを明示する必要がある。学術論文には著作権がないという補償ともなると教わった気がする。でも多忙な現在、そんなことをする必要がなくなった。それはのんびりした過去の話しだ。そんなことをいってたら、多忙な中で論文作成をしてる若い人たちの研究を阻害する。ひいてはこの国の将来もあやうくする、という考えのようだ。科学においては厳密な手続も大切だ。引用を明示する必要があると、理解してた、わたしが古いのかもしれない。

これは大筋、正しいと思うが、丁寧な説明がないと真意がつたわらないと思った。しかし面白い。この強い自己主張はこの国にめずらしい。異彩をはなつ。中間報告もすみ、様子をみてたら、また驚くようなニュースがとびこんできた。次のようなものだ。

小保方さんは若山山梨大教授に標本をわたし、キメラマウスをつくってもらった。そこで、129系統というマウスから作ったとされていたSTAP細胞が、遺伝子を調べてみたら、B6などという別の系統のマウスの細胞だった。ということは完全な捏造ではないか。ちょっとショックだった。で、詫摩さんの解説である。

1) この論文には、STAP細胞、STAP幹細胞、F1(雑種のことらしい)の三つの株がでている。ここで問題になったのは、STAP細胞でなく、STAP幹細胞のことである。
2) 記事は小保方さんが若山さんにSTAP細胞のかわりにES細胞をわたした。これで捏造したのではないかと、いいたいようだ。
3) 小保方さんがSTAP細胞の性質についてのべている。それをふまえると、記事が示唆するES細胞をわたしたという主張はみとめにくい。(これと同時にiPS細胞もわたしたという主張も仮にあったとして、これもみとめにくい。)
4) 系列がちがうとの主張はSTAP幹細胞についてである。これを無視する(あるいは、小保方さん側にたつてみる)。すると、小保方さんが提示する万能性をしめす細胞は、ES細胞でも、iPS細胞でもない。すると、とにもかくにもSTAP細胞ができた、とみとめることになる。

この内容を理解するのは一段とむづかしい。4) はわたしが強引にもってきたものである。これは何なのか、と思う。実は記事の中に引用された、ある研究機関の教授は「捏造」といってもよい、そんな段階だ、という。これとあわせ考えると、詫摩さんは、捏造といえる段階ではない、と判断してるようだ。では、別の話しである。

iPS細胞にかんして、ある研究者が世界ではじめて、iPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施した。たしか七例だった、という。これが読売新聞がだいだい的に報道したが、後日、撤回した。つまり誤報だった。超伝導の話しである。これは、1911年、ヘイケ・カメルリンク・オンネスが発見した。これははじめ、液体ヘリウムをつかい極低温で実現した。その後、液体窒素にかわった。すこし温度が上昇したということである。さらに、2000年ごろ、あいついで常温超伝導が実現したとの論文が提出され、世の中を騒がせた。わたしなど、ワクワクした。でもこれらは事実でないと判明した。今も研究がつづいている、という。小保方さんの論文の真偽はいつ判明するのか、武田先生がいってたが、地動説みたいに百年もかかるものかもしれない。いずれにしても、わたしにわかるはずがない。で、次の表をつくった。

正しくない場合と、正しい場合の比較、注意
該当者不正
小保方さん自業自得の世界がやってくる謹慎しないで研究する。再現性をたかめる。臨床実験にすすむ。さらに初期化の機序解明にとりくむ
理研特定法人の可能性をなくさない。恭順の意をしめす。体制をひきしめ、人事を刷新する検証調査を続行し第三者による再現をうながす。特許取得をいそがす。特定法人の実現をもとめる


このほかに、バカンティさん、マスコミ、悪口をいった研究者、学者、一般人にたいしても、この表にふくめることを考えたが、やめた。真実がたしかなものになるには時間がかかる、という武田先生の発言に関連して一言。iPS細胞をかたって詐欺商法がしょうじてるらしい。その真偽にかかわらずSTAP細胞にもこのような詐欺商法がでまわる危険性がある。どうすればいいんだろう。では、結論である。

結論

わたしは老人として若い人のことを考える。この国の大人は若い人を虐待している。小保方さんは、あのかわいらしい顔に似ず、とおってもすごい詐欺師かもしれない。でも一生懸命、研究にいそしんでる若い才能である可能性が充分にある。リケジョの星だとか、アイドルまがいの扱いをしたり、過去の恋愛模様を報道する。妬み嫉みのいりまじった指摘がでると、とたんに掌がえしである。まったく、大人として心が痛まないのかと思う。若い才能は、未熟で、むきだしで、傷つきやすい。配慮にかける大人の対応は、若い才能をつぶしてしまう。それでこの国の将来は大丈夫か。

関連リンク、日本未来館詫摩雅子氏ブロ
http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20140317stap-2.html

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