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ケーガン、ギリシャ歴史、アテネ帝国(14)、(3の2)


* 攻守同盟の結成
たしか紀元前四六一年だがアテネとスパルタのあいだで衝突があった。それまでずっと同盟関係を維持してたが、アテネがこの同盟から脱退した。紀元前四八一年に彼らは紛争の歴史があったが、それを脇において同盟をむすんだ。そしておなじ「友と敵」をもった。これは有名な条項だが、言いかえれば共通の外交政策をもったのである。繰りかえすがスパルタが政策をきめるのでなく、同盟が会議によりきめるのである。これは典型的なギリシャの同盟の方法である。このことをギリシャ語でいうとシマヒア(symmachia)というが、これは攻守同盟という意味である。

私はあなたの側にたってたたかう。あなたが攻撃された時だけでなく、もしあなたが他の誰かとたたかう時にもたたかうというわけである。その戦いはあなたの判断でおこなう戦いをふくむ。私はその時もあなたの側にいるとゆうわけである。この攻守同盟はギリシャ人がしってる惟一の同盟関係だった。お金のことは何もかいてない。同盟のための共同の基金にかんする条項はない。その意味は、各都市が自分の軍について自分が負担するとの考えかたなのだろう。定期的に招集される会合についての条項もない。会合は必要とかんがえた時に招集する。すべてのことは全員の合意により決定される。これは全員一致をもとめるものでない。ほぼ全員の合意が必要とゆう意味である。これはあたらしい事態であり、革新的なことである。これは最初の汎ギリシャ主義の戦争の出発ともいえる。トロイ戦争以来からみて初めてともいえる。

* 三つの島の要望への対応、スパルタとアテネ
さてすでにのべたが、三島防衛の要求をどうするかが議論となった。その時、そのため拠点に軍をおくるなどの約束をせず、スパルタはただ本国に引きあげていった。公式に表明された行動はない。何事も変化しなかった。そしてたんに帰国すると決定した。アテネだが、彼らはあたらしい政策を実行にうつしていく。彼らが前面にでる。彼らの主張を追及する。最初にいったことである。ペルシアはアティカに侵入し、おそるべき損害をあたえた。アクロポリスにのぼり、破壊した。そこにあった寺院、アテネ人からすればおそるべき神への冒涜である。彼らはこのようなことが二度とおこらないようにしたいとおもった。そこでアクロポリスの防禦および都市の壁の強化をはかった。他の都市はどうおもったか、興味ぶかいはなしがある。同盟国のいくつかから文句がでた。スパルタにいいつけた。アテネの行動に文句をつけた。これはわるい考えといった。そういったのはシーブス、メガラ(Megara)、コリンスというのが私の推測である。シーブスとメガラは隣国であり、アティカと隣接してる。またふるくからの敵である。コリンスは国境をせっしてないが近くの隣人である.アテネの強大化してゆく海軍と商業力に抵抗しようとしてる。コリンスは従来から巨大な海軍をもってた。商業においても勢力をほこってた。考古学的証拠によれば六世紀の昔からアテネに対抗してきたことがわかる。

* アテネへの文句、セミストクレスの謀略
その文句の中身だが、彼らがいう。もし壁が強化されたら、防衛力がたかまり、アテネは自信をもち、より攻撃的となる。その結果、問題を引きおこす。海の戦いでアテネはおどろくべきことをした。それはふるくからの敵対者や隣人たちの不安をたかめた。スパルタはこのことをしってた。また友人たちの文句を気にしてた。そこでアテネのセミストクレスがいったが、彼につき補足説明する。戦いのなかで偉大な英雄として登場してきた。かずかずのすばらしい業績をあげた。アテネの海軍を取りしきった。サラミスの海戦で重大な決断をした。人々は彼こそがこの勝利を引きだしたとおもってた。歴史家、プルターク(Plutarch)がいう。この後でおこなわれたオリンピックゲームのことだ。彼が登場した。ゲームをみてた観客はゲームをそっちのけにして彼に注目した。彼の人気はすさまじかった。これを何にたとえればよいか、たとえば、ルーズベルト(Rosevelt)、チャーチル(Churchill)、スターリン(Stalin)、彼らを一人の人間に詰めこんで、第二次大戦の後に登場させる。これがセミストクレスだ。これくらいかもしれない。で、セミストクレスはスパルタにいった。

彼はその頃、アテネの大立者になってた。アテネの壁の再建をできるだがはやく完成させる。そしてアテネの立場をできるだけ有利にする。彼はこれを海軍、国際関係、一般の問題においてかんがえてた。彼はこのため、ちょっとした策略をたくらんだ。ツキジデス(Thucydides)がいう。彼はスパルタにいった。スパルタも人をアテネにおくった。その時、彼はアテネ人に彼らを自分がもどってくるまで抑留しておけといった。次にこういった。アテネの壁が充分な高さになって防衛の機能がたかまったら、すぐおしえてくれ。そして彼はスパルタにいって、はなした。スパルタは彼に、アテネ人は壁をつくってるねといった。我々はそれをやるのはあなた方の問題と承知してるが、もしペルシアはやってきて、アテネの壁をつかって彼らの拠点をつくる。それを我々の攻撃の拠点にする。これが可能となる。するとセミストクレスがいう。そんな馬鹿なことをどこできいたのか。こんなことだったらしい。彼はいう。スパルタは代表団をアテネにおくれ。そして、私が帰国するまで彼らをそこに滞在させろといった。ある日、アテネから使者がやってきて壁が完成したことをしらせた。彼はスパルタ人にいった。あなた方は壁について文句をいってたが、あなた方のいってたとおりだった。我々は壁をつくった。これから我々は充分に巨大となった。充分に自分自身を防禦できる。では、あなた方は何ができるかと彼がいう。そしてそこで演説をした。

それは一種の独立宣言である。スパルタと 対等となったという意味である。我々はあなた方から命令をうけない。もし助言があるというなら、それはあなた方のなかにとどめてほしい。我々のことは我々がきめる。あなた方のことはあなた方でやってくれ。あなた方は我々の優越者ではない。我々はあなた方と対等者だ。ということをいった。ツキジデスはいう。セミストクレスはそれからスパルタで人気がなくなった。これでスパルタは彼にずっと打撃をあたえようとするだろう。また取りのぞこうとするだろう。それはともかく。彼は自分がやろうとしたことを実現した。アテネは壁でまもられた都市となった。スパルタとの公的な関係はともかく。ギリシャ同盟においてアテネは独立したプレーヤーとなったのである。

* アテネ、 対等の競争者
ツキジデスはいう。スパルタはこれを受けいれた。しかしひそかに恨みをだいてた。そういえる手掛りがある。これから彼らのあいだでおきる事態のなかにみえるものがある。スパルタには党派がある。事態は複雑だが、これだけはたしかなことである。あるスパルタ人はペロポネソスに引きこもる。これでよい。そしてペロポネソス以外の世界とはまったく関係をもたない。エーゲ海、それ以上の世界のことである。そうして、伝統的な生活にもどるというわけである。平和党、保守派である。当然、戦争の勝利の後にスパルタの勢力を拡大したいというものもいる。

ギリシャ全土、さらにそれ以上、海外までというわけである。この考えは表面的には表にでない。ひそかに存在してゆく。スパルタの公的な立場はアテネの立場をみとめるというものである。これは今後の動きのなかにあらわれてくるだろう。

* パウセニアスの悪業
プラティアのスパルタの軍の指揮官のパウセニアス(Pausasenius)だが、彼は戦いの後に指導的役割をはたすのだが、彼はスパルタの二人いる王の一人である。彼はその前に指揮をとってた王が引退しエーゲ海にでていった。艦隊も引きつれていったのだが、彼はビザンチウム、ヘルスポントや海峡でペルシアとたたかい成果をあげ、海峡を支配下においた。だがギリシャ人のなかに敵をつくった。その理由には同僚のギリシャ人を劣等な人々としてあつかった。あたかもスパルタの部下のようにあつかった。これは外にでたスパルタ人がみせる一般的な傾向である。その程度は人によりちがうがパウセニアスはそれがひどかった。同盟のギリシャ人にたいする態度にあらわれ放置できない問題となった。これにくわえてさらに問題があった。

彼は富や贅沢に取りこまれてしまった。ペルシア人がみせた富や贅沢にである。理論的にいうとほとんどのギリシャ人は非常に貧乏であり、ペルシア人の道徳心の欠如を彼らの観点から毛嫌いしてた。ペルシア人は何よりも非常に裕福であり、ギリシャ人はそうでない。その富を多様な目的につかう。それはギリシャ人にとってはギリシャ的でなく、また魅力的でもなかった。

しかしパウセニアスはそれに取りこまれた。それで彼はまるでペルシアの州長官のように振るまいはじめた。こんなことが同僚のギリシャ人をいらだたせた。そこで彼の罪状が問題になり彼はスパルタにおいて専政主として告発された。次は反逆であった。ペルシア側と州長官の地位につきなんらかの取引をしたらしい。これは本国送還、裁判にかけることとなった。彼は罷免されふたたび指揮官として派遣されなかった。 さらに別の罪状が告発されるはこびとなった。それは死刑にしょせられるべきものだった。

大事な点だがスパルタはひどい不名誉を同僚のギリシャ人にあたえこの指揮官を引つこめた。かわりの人物、ドーカス(Dorcus)という人物をおくった。同盟軍はスパルタの指揮官は今回は受けいれないと拒否した。彼を母国に送りかえした。これは非常に重要な出来事だった。同盟軍は、今やエーゲ海やその境界にいる人々である。彼ら はアテネの影響をうけ、将来的にはアテネ帝国にはいる人々である。これらの人々はスパルタの支配をよろこばない都市にいる人々である。どうしてこうなったか。

* スパルタの気持
最初はパウセニアスの愚行である。彼がスパルタへの信頼をうしなわせた。スパルタはこの種の海の活動は得意でなかった。その証拠はかならずしもはっきりできないが、紀元前四七九年に彼らは三つの島々の加入に反対している。また、そこには海戦に勝利したアテネがいる。この種の活動は彼らのもっとも関心のあるところである。アテネはそんな事態をまち、それに対抗する覚悟がある。送りかえした同盟の人々の気持のなかには、スパルタにたいし、もうおくってこないでくれというものがある。スパルタはドーカスのかわりをおくらなかった。そこにはそれを受けいれ、スパルタは将来のペルシアへの作戦には参加しないとの考えがある。それはもしおこればより攻撃的になることはあきらかだったからである。

* ペルシアはアテネにまかせればよいとの考え
ツキジデスはこのスパルタの判断についてこういってる。スパルタ人はペルシア戦争から手ををひきたい。アテネがその戦争を主導する、それだけの能力をもつ。スパルタがどうおもおうとやってゆく用意がある。自分たちがこの戦争をやってゆく必要がない。このようなことをやりたいともおもわないとおもってる。というのは、アテネがやってくれるから、すべてはうまくゆく。問題ない。彼らは我々の友人だ。だが、それは間違いなく、すべてのスパルタ人がかんがえてることでない。

それは一つの党派にいる人々の意見である。保守派、平和主義、ペロポネソスにとどまろうという党派である。彼らはなおも支配的な勢力である。私はうたがうが、パウセニアスの愚行によりうしなわれたスパルタの威信であるが、彼らの立場をつよめたとおもわない。あきらかにいえることだが、代替を他の同盟から拒否されたことについて、スパルタは無理に代替をおくろうとする必要があるのか、そうすることで我々を不人気にする必要があるのかとかんがえた。我々のところにかっておおくのギリシャ人がやってきて、我々に頼みこんだ。彼らのためにたたかってくれ、彼らをまもってくれといってきた。ところが今や彼らは我々を拒否した。だから我々はペロポネソスにとどまり、外にでる必要はない。これは我々の作戦でない。こんなことが議論されたのだろう。

* ペルシア攻撃の主導者、アテネ
ではペルシアへの攻撃がおわることを意味するのか。否、同盟はそうかんがえてない。そこで、彼らはアテネにむかった。そしてこれからやってくる戦いを主導するようもとめた。ヘロドタスはこういってる。アテネはパウセニアスの傲慢さ(hubris)を口実にしてそこでのギリシャ人の主導権をにぎった。その計画はこうだった。彼らは自分たちの作戦を実行することを希望してる。作戦をつくり、その考えを実行しようとしたという。

しかしそれはちがうとおもう。その根拠だが、部分的にただしいところがある。だが、はっきりいえることは、アテネは、彼らがアテネにもとめることをやる意志と用意がある。しかし彼らがその力と影響力、あるいは意志を発揮し同盟に決断させようとするとの考えがあったか。それが同盟がのぞんでないのにやるとの考えだが、それはちがうとおもう。私はすこし面倒な比較をおこなう。第二次大戦後の、北大西洋条約機構(NATO)の形成とデリアン同盟、これは最終的にはペルシア戦争の後にアテネ帝国につながった同盟だが、その形成についてである。

* NATO形成の過程
デリアン同盟についてである。ノルウェーやスウェーデンの学者がNATOの形成過程を説明してる。まず主導する者(hegemony)の確立が要請(invitation)されたという。それは一九四五から一九四八年にかけおきたことである。欧州人たちが究極にNATOの一部になる。そして米国人がこれにくわわることが必要だといってる。第一次大戦でやった失敗を繰りかえさない。それは米国が北米に引っこみ欧州と政治的関係をもたなくなることを意味する。それは欧州各国を恐怖に追いやる。欧州を崩壊させソビエトの勢力下におくことになるとおそれてたという。

彼らは米国が指導してくれることがぜひとも必要だとおもってた。米国はよろこんでそうすることにしてた。でもすべての米国人がのぞんでいたわけでない。ちがった考えの党派があり、ちがった意見があった。米国大統領や米国政府はことなる意見と一生懸命にたたかわねばならなかった。米国民を説得しなければならなかった。それが実現したのだが、米国の国益が欧州を以前の状態にもどすこと、共産主義者に抵抗し欧州をその勢力下におかさせないである。議論でこれが勝利した。
(3の2おわり)

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