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原油安と世界 [脱原発]

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* 1) グラフをみて
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http://ecodb.net/から引用
原発の話しなのだがすこし横道にそれる。このグラフを見てほしい。2013年に、1バレルあたり100$をこえたものが、2015年には50$と急落した。二十一世紀の石油ショックといわれてる。ところが1990年代は、ほぼ20$の水準を維持し、2000年代にはいって急激に上昇していいった。現在の水準は低い水準の二倍である。

* 2) 戦争、紛争、テロ、狂と合理性
わたしは、この急変があったことをほとんど感じてなかった。それは当時、異常な円高であったので、ただちに国内の石油価格につながらなかったからだろう。知らない間に何がおきてたのか、不思議な気がする。さて、戦争のことである。

戦争には、戦い、紛争、テロ、それにともなう悲惨な犠牲といった狂的側面がある。他方、それと反対のきわめて合理的な側面がある。それは金、金もうけである。原油価格の上昇がつづいた'00年代の富という金はどこへながれたのだろう。

* 3) 独の選択
** 1) ドイツは政策を転換、原発廃止を推進
ドイツの現政権は原発廃止をすすめてる。これは2011年の東日本大震災における福島原発の惨状から政策を転換したものである。実はこの政策はかって行なわれ、不調のもと変更され今回にいわば復活したものである。日本においてもこれに呼応するように原発廃止の気運がたかまった。それは、ほとんどドイツにならうものと思う。しかし、安倍政権の登場により、現在は漸進主義で原発依存をへらすというのが国民の総意である。わたしにとってもドイツの原理主義のような政策転換は面白いと感じる。日本の運動がとかくみせる「歌って踊って反原発」という傾向と好対照な合理的側面がある。

** 2) 国民が痛みを引きうけて政策をすすめてる
前回の政策転換の原因に、代替エネルギーの確保が困難、コスト高からくる企業の国際競争力の低下があった。今回には多様な代替エネルギーの確報、企業の優遇措置という政策がふくまれている。しかしこれにたいする批判の声が根づよくある。

需要に即応して送電し、ただちに消費されるという電気の性質から安定した電力の確保無しでは電力供給が困難。太陽光発電のように自然条件に左右される方法では、供給側の事情で一方的に送電される。そのため無理に電力を安値で他国に売るという無駄がでる。現在の技術革新はこれをおぎなうほどでない。安い企業向電力は、高い電気料金として国民負担となってる。安定電力の供給はどうしてるのか。

結局、ロシアの液化ガスによる火力発電によってる。ここにはスキャンダラスな側面がある。前政権の幹部がこの液化ガス供給企業に天下りしてるという指摘がある。しかし、ドイツでは国民(一般の国民)の負担の増加という痛みのともなう政策を選択したと思う。環境主義を原理とする政策にはかってのナティズムに似た怖さを感じるのであるが、もうすこし冷静な判断があるようだ。その潔ぎよさには敬意をはらう。政治にはもっと複雑な事情があるのだろう。

** 3) ロシア依存のエネルギーの安定供給はあやうくなった
2014年3月、ロシアがクリミアを併合した。欧州は反発し経済制裁にでた。その時、ドイツのメルケル首相は建設的な関係をもとめるという宥和的な発言をした。不思議な発言だった。ロシアの領土的野心が露骨になったウクライナ東部において、同年7月、マレーシア機の墜落、300人弱のオランダ人が死亡した。撃墜はロシア勢力によると信じられてる。これにより欧州、米国が強行な経済制裁をおこなった。わたしはこの時、欧州がエネルギーをロシアにおおきく依存していることを知った。宥和的発言も納得できた。

しかし第三次世界大戦の引き金にもなりかねないロシアの暴挙に欧州は深刻な反省をしいられることとなったようだ。エネルギー消費のたしか30%がロシアからという。だからこの30%の削減を検討してるとの記事を見た。ドイツのエネルギー政策の根本的変更をしいられる事態である。反原発政策はどうなるのかと気になるが、依然そのままのようだ。

* 4) ロシアの野心
** 1) クリミア編入の誤り、ここ二年でロシア経済は疲弊か
2014年12月に対ドルでルーブルが20%下落、年初来からの下落率は50%超となった。デフォルト(債務不履行)に追い込まれた1998年の再来が懸念された。これには欧米各国による経済制裁と石油収入におおきく依存する国家財政への不安がある。7月以来、強硬に転じた経済制裁がきいてきた。プーチン大統領はこれから二年ほどは経済困難があると予想している。市民はドルの購入や、物価上昇をみこんで高級家具の購入など生活防衛の動きが報道された。ところでロシア人は困窮にたえるという。わたしの印象論である。

** 2) ロシア人には伝統的発想がある、らしい
英語でYoutubeを視聴してたら、蒙古(あるいは匈奴)に攻撃されたロシアの都市国家が登場した。わたしの貧弱な英語から推測と印象しかないが、厳寒の雪原がうつしだされ、荘重というか陰鬱な解説がお経のようにつづく。要するに、籠城し孤立し市民が虐殺されるのである。そんなところを、寒々とし た画面を背景に解説する。ロシア版平家物語かと思った。

蒙古帝国の軍隊に包囲されて籠城した市民が虐殺されるのである。わたしは、じゃあ他の都市国家に援助をもとめて協力して対抗すればいいのにと思った。特にロシアがよわいとは思えない。ある場面では戦果をあげ撃退してる。どんな大軍であったとしても遠征軍である。異国の地で背後をつかれたら、戦意喪失する。勝てなくとも負けるはずがない。こんなゲームをやってたら当然の戦略だ。こう思うのだが、一つはロシア人は、ひたすら運命に耐えしのぶのがすき(ナポレオンの遠征に耐えた歴史もある)。二つにはロシア人はほっておけば必ずバラバラになるとの諦観がある。個性を主張し、時に闘い時に連合して共通の敵にたちむかうより、強権的に帝国を形成する。こんな心性が根づいてるのか、という印象をもった。プーチン大統領は経済的困難にもかかわらず90%をこえる支持をえてるそうだ。

** 3) 帝国主義の復活が国民の利益となるか
最近、大統領は前言を変更し、綿密な事前準備のもとクリミアを併合したことをあきらかにした。こんな十九世紀的政略は二十一世紀にそぐわないと思うのだが、国民の人気をうしなわない。むしろさらに人気がたかまるとふんでの発言だろう。わたしはロシアが1991年の発足から1998年の国家財政破綻、現在にいたる中で、高騰する原油価格の恩恵で国家を運営、国民生活を犠牲にしつつも軍事大国を維持してきたことを知った。中産階級の発展により国民経済の健全な発展をはかり、欧米に対抗する大国の道をあゆめばよいと思ってたが、そんな遠い夢より先祖返りのロシア帝国の復活を夢みる国民の心性にたよった国家運営をはかっていることを知って、正直、ガッカリした。

* 5) サウジと米国
** 1) 両国が手をむすんで原油安をしかけた、とか
サウジと米国の関係には根づよい噂がある。両国が手をにぎって原油安をしかけたというものだ。2014年11月にオペックの総会があった。そこで価格の下落をふせぐ減産をおこなわないという決定がなされた。この前に米国の国務長官がサウジを訪問したと記憶してるが、今回、記事をチェックしたがみつからなかった。何故こんな噂がささやかれるのか、その事情は複雑である。

** 2) 互いの損得は必ずしも同じでないが妥協点があった、らしい
1) 高騰する原油価格を背景に、米国において、ここ三年でシェルオイルの開発が急速にすすんだ。結果、日産900万バレルの輸入を必要としていたのが、輸出余力すらもつようになった。ただし、原油価格が50$/バレルよりさがると採算がとれなくなるという。
2) サウジは、石油を世界戦略の要として、価格を操作できる調整力をできるだけ長く保持したいと考えてる。米国はオペックの非加盟国である。米国が輸出国にかわれば、サウジは現在の力をうしなう。低い原油価格によりシェールオイルの台頭おさえたい。
3) 宗派がちがうサウジとイランの関係、シリア、イスラム国など複雑な政治情勢がある。これが両国に妥協の余地をあたえる。さらにロシアも石油輸出国であり、オペックをおびやかす存在である。

サウジと米国が50$/バレルで手をにぎり、お互いの立場を尊重して妥協をはかった。これが噂の肝である。ところでオペック加盟国にベネズエラがある。その話しである。

* 6) ベネズエラとキューバ、米国の世界戦略
ベネズエラは有力な石油輸出国である。前大統領に引きつづき現大統領も反米姿勢を維持してる。中南米には米国にとって目の上のタンコブのような存在、キューバがいる。ベネズエラが相当援助してたらしい。ところがその余力がなくなってきた頃、キューバが米国との国交樹立をうちあげた。これにベネズエラがおどろいたらしいが、外交に失点のおおいオバマ大統領はよろこんだ。ところが、キューバ革命当時の米国資産の没収などの傷跡はまだまだ忘れられてない。もう若い世代だから、ちゃらにして外交を考えようというのは無理らしい。それはともかく、石油をテコとした米国の世界戦略がすけてみえる。もう一つ、驚愕の事件があった。

* 7) イスラム国の惨劇
** 1) まさかと思ったことが現実に、イスラム国の不思議
悲劇にあわれた日本人の二人、その家族の皆さんには気の毒と思うが、この話しの流れから、すこし筆がすべるかもしれない。お断りしておく。さて、誘拐や身代金騒ぎは、まるでアラビア商人の法外のふっかけみたいに思ってた日本人にとって驚愕の事件だった。本当におきてしまって、やっと厳しい世界の姿を感じたのでないか。イスラム国って何だろう。イラク戦争の残党、過激派が合流した集団、さらに石油施設を違法にうばい、そこからの収入を活動資金にしてる。こんなものだろうが、突然、国家宣言をしたことが目あたらしい。これで一躍世界の注目をあつめた。よく見ると、その乱暴な活動振りと裏腹に、インターネットのSNSを巧妙に活用して、戦闘員を欧州、豪州などからリクルートしてくる。新時代の過激派である。 このイスラム国が原油安にくるしんでる。ところで、冒頭の戦争の話しである。

** 2) 過激派でも金がいる、石油は大切な資金源
高騰した石油から得られた利益は、いわば不労所得であるが、これはどこにながれたのか。イスラム国の戦闘員は、訓練をうけ最新の武器をあたえられ戦闘に参加したりもする。一年間で終了、帰国しあらたな戦闘員をリクルートする働きをするそうだ。殺人をよろこぶ人はすくないと思うが、ミリタリーオタクには、とっても魅力的な仕事だろう。長期不況にある欧州で若い人が社会に職をみつけるのは非常にむづかしい。余計に魅力的だ。どれだけ給料がもらえるのか、危険なだけ絶対に好条件にきまってる。たんなる大義名分だけでは人をあつめられない。過激派の人たちはある意味、戦争を稼業としてる人でもある。

どんなひどい敗戦でも死者は部隊の一割か二割ときいた。つまりそのほかは生きのこる。まして全面衝突のような戦いはさける。するとかなり稼ぎのよい仕事に見える。でも資金がいる。これがどこからきてるのか、特に紛争がたえない中東においてどこからきてるのか。石油が資金源となってることは間違いない。さて、わたしの感想である。

* 8) 米国の対応力
20$/バレルから100$/バレルをこえる高騰は、中国ほかおおくの途上国の経済成長によるものらしい。日本に理解不能の円高がすすんだ時代だ。わたしはそこでボットしてたと思う。ところが米国は、たちまち価格高騰により開かれたシェールオイルの開発にのりだした。三年で輸出国にかわった。今後も開発がすすむだろう。今回の噂の真相では、50万バレルでの妥協は、新規の開発には打撃であるという。しかしそれでもサウジと妥協をはかった。というのであるから、日本では絶対できないと思う。ぐずぐずと既得権の声にながされて決断を先送りしてしまう国とくらべて、まことに果断である。

* 9) 今後
この国の今後である。原発にだけしぼる。空疎な理想論にながされず、現在の漸進主義をふまえ適切な決断をしてもらいたい。

わたしのブログには関連した記事がある。参考までにしめす。
ドイツの原発事情 (2014/5/12)
イスラム国 (2014/9/23)

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