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STAP騒動のおわり(その2) [STAP騒動]

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* 1) はじめに
一月十日のブログ(STAP騒動のおわり)を書いた。そこで釈然としない気持をしるしたが、日経サイエンス3月号で詫摩雅子氏が調査委員会(桂調査委員長)などの報告をもとにSTAP細胞の正体は何かということを解説してくれた。詫摩氏は昨年五月四日のブログでこのことをはじめた書いた時、詫摩氏の解説記事をよんで全体像を知た。もっとも参考にしたものであった。今回この論文を読んでやっとおおくが納得できた。以下はこれをわたしなりに解説したものと、それを踏まえてわたしの感想を書いている。まず結論である。

1) 小保方研究室にのこってたSTAP関連の細胞と調査サンプルを詳細に分析した。すべて特定のES細胞と一致した。
2) これほど頻繁におきたES細胞の混入はミスとは考えにくいが、誰が混入させたかを特定できなかった。
3) 昨年12月に理研の調査委員会(桂勲委員長)が報告書で、あらたに二点の捏造と、あまりにも杜撰な実験の様子をあきらかにした。


日経サイエンス 2015年 03月号

日経サイエンス 2015年 03月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日経サイエンス
  • 発売日: 2015/01/24
  • メディア: 雑誌



* 2) 小保方氏の夢、STAP細胞と論文の疑惑
2014年1月に発表した小保方論文において、小保方氏は、新生児のマウスの脾臓からとった細胞を弱酸性の溶液につけると、未分化の状態となる。つまり何にでもなれる状態の細胞になる。これがSTAP細胞という。これが本当なら生物学の教科書が書きかえられるノーベル賞級の大発見である。しかし発表直後から疑問がだされ、二月に 理研に立ちあげた調査委員会(石井委員長)で、論文に掲載された画像につき二点の論文不正を指摘し、これをもって捏造、改竄の研究不正を認定した。しかしSTAP細胞の科学的調査に踏みこまなかった。以降にも疑問点が提出されたが調査には消極的だった。ところが調査委員会でなくとも利用できる、STAP細胞の正体にせまれる二つの物証があった。

* 3) 小保方氏がつくったSTAP細胞の正体は何か
それは、1) STAP細胞をもらって若山山梨大学教授がつくってもっていたSTAP幹細胞であり、また、2) 論文に筆者らが公開した遺伝子配列データである。1)につき、若山氏は手元にあるSTAP幹細胞の解析を外部に依頼した。2)につき、理研統合生命医科学研究センターの遠藤高帆上級研究員が独自に解析をはじめた。両者とも五月下旬に結果がわかった。

** 1) 残存のSTAP幹細胞、遺伝子配列データを解析、疑問浮上も理研は消極的
1) について若山氏が用意したマウスとちがう細胞がつかわれてたことがわかったと発表した。(これは小保方氏がマウスをすりかえた研究不正の証拠として一時報道された。証拠としては不十分だったらしい。若山氏は後日に前言を撤回してる。以上、ブログ筆者の注)。

2) について遠藤氏が遺伝子配列データからおおきな染色体異常をみつけた。これはマウスが胎児のうちに死亡するような異常であった。新生児の脾臓から採取した細胞からつくったと主張するSTAP細胞の存在をうたがわせるものだった。

しかし当時、理研は、調査の着手には消極的だった。

** 2) ついに理研も調査に着手、遠藤氏、東大もはじめる
六月、若山氏からSTAP幹細胞の解析結果をもらった遠藤氏が奇妙な事実を発見した。遺伝子配列データの中に非常に特殊な遺伝子が存在することを発見した。それはマウスの精子を緑色に光らせる螢光タンパク質の遺伝子だった。これが身体を光らせる遺伝子とセットになって存在していた。これは際立った特徴である。これでSTAP細胞の正体をつかむ手掛かりをつかんだ。CDB(理研発生・再生科学総合研究センター)はSTAP幹細胞のゲノム全体の解析に着手し、若山氏の依頼をうけた遠藤氏も解析に着手した。さらに東京大学のグループもNHKの依頼をうけて解析をはじめた。

** 3) 三者が同一の結論になるが、方法にながい説明がいる
遠藤氏は遺伝子配列データを再解析し、トリソミーという現象があることを発見した。これがSTAP細胞がES細胞だとする最初の決め手だった。トリソミーがおきると胎児はほとんど死亡する。他方、ES細胞を培養するとこの現象はよくおきる。しかしSTAP細胞の全否定につながる主張としては、ES細胞の由来の特定が必要とされた。つまり目標がさだまた。

** 4) さらに説明がつづく
STAP細胞は増殖しないのでのこらない。しかしSTAP幹細胞はのこる。特殊な培地て増殖させると二つの幹細胞がのこる。一つはES細胞と性質がそっくりにSTAP幹細胞であり、もう一つはFI幹細胞である。これはキメラマウスをつくる場合、胎児にも胎盤にもなるというものである。これらの二つの幹細胞は、もととなったSTAP幹細胞、さらにそのもととなったマウスと系統や螢光タンパク質遺伝子の種類が一致するはずだ。

** 5)さらに螢光の利用、キメラマウスの作成も説明する
キメラマウスの作成はSTAP細胞の論証の決め手の一つである。そこでは螢光現象を利用してる。キメラマウスになった時にどの程度、STAP細胞が身体づくりに寄与したかが螢光で見当がつくからだ。STAP細胞を採取するマウスは、全身が螢光する白マウス(若山129)と黒マウス(若山B6)から実験のたびに交配して雑種の若山マウスをつくる。これから樹立したSTAP幹細胞FLSとFI幹細胞CLSが、それぞれ、八株と四株がのこってた。

** 6) 十年ほど前の話しをする、やっと狙いがきまる
上述のとおり精子が光るという発見があった。この特徴をもったES細胞の候補はかってのCDBの若山研究室にいた大田浩研究員が樹立してES細胞だった。大田氏は2005年に岡部勝大阪大学教授から特殊な黒マウスをゆずりうけ、それと一般の白マウスをかけあわせ、その受精卵などからES細胞をつくった。岡部マウスは精子が光る遺伝子と身体が光る遺伝子をセットでもってた。これは大田マウスにひきつがれてる。大田株は二種類あり、それぞれ二株と四株だった。これと比較すればよい。やりかたである。

** 7) 桂調査委は精子に着目、大田マウスES1と特定
桂調査委は精子を光らせる遺伝子の挿入位置とコピーの数を詳細にしらべた。STAP幹細胞FLSとFI幹細胞CLSと大田氏の株が一致することを確認した。次に、性染色体をしらべ、大田氏の株のうち受精卵からつくった二株のどちらかにしぼった。さらにゲノムの塩基配列をすべて読み、兄弟株で塩基配列が一文字だけちがう場所(SNP)を二万数カ所みつけた。それとFLSとCLSを照合して、上記の二株の一つ、大田マウスES1に特定した。
** 8) 遠藤氏はSTRに注目し、大田マウスES1と断定
遠藤氏は東北大黒木陽子准教授に協力してもらってSTRという特徴に着目して大田マウスES1を特定した。このSTRとは二から八塩基の短かい配列が繰りかえしならぶ短鎖縦列反をいう。NAによる親子鑑定や犯罪捜査に利用される。遠藤氏はSTAP幹細胞FLSが大田マウスES1と断定した。

** 9) 東大のグループは欠失から、大田マウスの株に特定
染色体のごく一部がかけている欠失を特徴にして、STAP幹細胞FLSと大田氏のES細胞を比較したところ、大田マウスES1がふくまれる二株のどちらかまで、特定できた。この特定だけにおわらない。さらに追及がつづく。

** 10) 他にGLS、AC129、また若山氏につくらせたSTAP幹細胞もES細胞だった
小保方研究室には、上記のほかSTAP幹細胞としてGLSというものが十一株、AC129というものが二株あった。桂調査委はこれらも次のようにES細胞と特定した。GLSについてである。

小保方論文においてGLSはMOFというマウスの系列であるといってる。これには重大な染色体の構造異常があり、マウスの生存や子をうむことはむづかしいとしてる。つまりこれからキメラマウスができるとは思えないが、さらに調査がつづく。若山研究室の研究員が別の目的でつくったGOFマウスの核移植ES細胞を小保方氏のもとめによりシャーレごとおくった。このGOFマウス核移植ESを詳細にしらべた。構造異常やこまかな特徴がGLSと一致した。つまりこのES細胞らしい。AC129、その他についてである。

AC129は色々しらべて、若山マウスES1株とわかった。この他小保方論文にでていないが、STAP幹細胞とされるものがある。それは小保方氏が横について若山氏がSTAP細胞からつくったSTAP幹細胞である。これも若山ES1だった。STAP細胞の論拠となるものにテラトーマがある。その話しである。

** 11) ES細胞が特定できたが、さらにテラトーマの追及、またES細胞
小保方研究室にはSTAP細胞からつくられたテラトーマ(奇形腫)の標本がのこってた。これはGOFマウスからつくったSTAP細胞のはずだ。このテラトーマ作成は若山氏の関与がないものだ。小保方氏の研究の精度をうかがわせるものとして桂調査委も注目してた。テラトーマ標本からDNAを抽出してしらべた。精子を光らす特徴から大田マウスES1の可能性が高いと判定された。騒動当初の疑念の話しをする。

当初からテラトーマについて疑問があった。分化しすぎて成人マウスのようだ。また、ネットで小保方論文でおこなわれた別に実験の写真と同一であると指摘された。石井調査委員会も三月これをみとめ、捏造と判定した。実際に実施してないとまでいわれた。それを桂調査委は調査し、大田マウスES1を確認したことでテラトーマ実験が実施されたことが確認された。それは意味のないES細胞からものではあるが。さて、さらに追及はつづく。

** 12) さらにテラトーマ実験の杜撰さをあばく
標本組織が本当に移植されたものかをしらべた。すると螢光タンパク質をふくむ組織もあったが、分化しすぎてると指摘があった、小腸上皮のような組織、膵臓のような組織には螢光タンパク質がふくまれてなかった。これは大田マウスES1に由来すれば螢光タンパク質がふくまれるが、そうでないことを意味する。桂調査委はこれらは、移植をうけた普通のマウスの組織だと結論づけてる。これは実験の杜撰をあばくものか、残酷な気がする。桂調査委は小保方論文の論拠を根こそぎにしたいのかもしれない。

** 13) 小保方研究室にはキメラマウスの子がのこった、ES細胞だった
キメラマウスは、普通のマウスと交配して子をつくることができる。子のDNAがのこってた。これには大田マウスES1の特徴があった。奇しくも登場した大田氏の話しが必要である。

** 14) こんなに出てくる大田マウスとは何か、何故、小保方研究室にあったか
上述のようにSTAP細胞の正体としてあらわれたのが大田マウスES1であった。大田氏は2010年3月に若山研究室を転出した。若山研究室でSTAP細胞の研究がはじまったのは、2011年4月からである。両者に接点はないはずだ。このことを桂調査委が大田氏に確認し、また他のメンバーの実験ノートも確認してる。ところが小保方研究室の冷凍庫には、その細胞があった。今度は日経サイエンスの独自情報である。

冷凍庫にはすでに帰国した留学生の別の核移植ES細胞のチューブが八十本、さらに百本をこえる細胞のチューブがあったという。由来がわからないのが、おおかった。そのうち「129/GFP ES」と手書きされたものをしらべた。桂調査委はこれを大田マウスES1と断定した。これが大田氏がのこしたものかは、命名方法から可能性があるが断言できなかった。大田氏はすべて持ちだしたので、のこってないはずだが、わすれてた可能性もあるという。だんだん書くのが重苦しくなる。詫摩氏が思いをこめていう。

** 15) 論文では胎盤が光る、だから非ES細胞といってたのに
小保方論文でSTAP細胞はキメラマウスをつくった時、胎盤にも分化するといってた。これはES細胞にはない特徴である。共著者の笹井氏も丹羽氏も、これを論拠にES細胞でないと四月の会見でいった。まだこの話しである。若山氏が小保方氏に方法をしめし確認を指示し、さらに丹羽氏も別に方法をしめし確認を指示した。胎盤への分化はこうして確認した。だからES細胞でないと四月の会見でいったわけだ。桂調査委はこの点につき専門家に意見をもとめた。分化したと証明できてないと評価された。これだけ主張してた論拠がここでくずれた。これはほぼ一年前に詫摩氏の記事を読んだ時、この点があるからSTAP細胞の存在は否定できないと評価しておれれたことを記憶してる。同氏が何を思うか、ここに記載されてない。

* 4) 結局ES細胞、誰がこんなことをやったのか
** 1) 犯人は特定できない、という
小保方研究室にのこってる組織や実験サンプルはすべてES細胞だった。これが偶然に混入したとは考えにくい。ところが、STAP細胞の培養には七日間、培養器に放置する。当時の若山研の鍵の管理状況からは、誰が混入させたか特定できない。これが桂調査委の結論である。釈然としないが、上記129/GFP ESについても、小保方氏、若山氏、研究室のメンバーは一様にまったく不知といってる。だから犯人さがしは無理か。だったらもうやめてもいいようだがだ桂調査委の追及はづづく。疑惑のある図版のことである。

** 2) でも図版の捏造は断定できた
桂調査委は二点の図版につき捏造を断定した。一つは、出勤記録などから実験実施が不可能と判定できた。もう一つは小保方氏が解析を依頼した部所に生データがのこっていて、小保方氏も捏造をみとめるような発言があった。さてその他の図版についてである。

桂調査委のもとめにもかかわらず、小保方氏がオリジナルのデータ提供を拒否した。このため不正を認定できなかったという。詫摩氏はこれお非常に後味のわるいこととのべておられる。もう全貌は見えた。もういいと思うが詫摩氏はさらに追及する。

** 3) 全貌が見えた気がするが、さらに詫摩氏が追及する
一体、偶然の混入は可能かであるのか。NGS解析データというものがある。これは、その細胞でどのような遺伝子がはたらいたかを網羅的にしらべる。これを他の細胞とくらべることにより、その細胞の性質を知ることができるものである。この解析を小保方氏が実施しており、桂調査委もしらべている。また解析を担当した別の部所に生データものこってるという。

詫摩氏は結論にあわせて適当な細胞を選択してた。その操作がNGS解析データの解析によりわかる。こう主張したいようだ。ところが桂調査委はそこまでは、いえないという結論である。結局詫摩氏もこれを否定し、あるいは意図的操作を主張するところまでいったない。ところでこのあたりの解説は、わたしにはほとんど、ついてゆけないので、こんな抽象的な記述となった。さて、わたしは見るべきものは見た。で、結論をいいたい。

* 5) わたしの結論
** 1) 詫摩氏の論文はすばらしく、桂調査委もご苦労さんといいたい

ほぼ一年前、詫摩氏がSTAP騒動について解説した論文に出あった。これでSTAP細胞をまなんだ。必要な部分を網羅し、一般人が理解できるような解説だった。その評価も公平だった。それから、この騒動に決着をつけるかのような時期にこの論文に出あった。奇遇である。良質な推理小説を読むような展開であり、読んでいてたのしかった。ありがとうとお礼をいいたい。また桂調査委のご苦労も多とし、お礼を申しあげる。

** 2) 国民のおおくは小保方氏に同情的
わたしは科学者の小保方氏への目が厳しすぎると感じてた。昨年の一月の公表に安倍首相が女性がかがやく社会の象徴として賞賛した。石井調査委員会の報告がでたときに、たしか自民党の科学技術の部会長が理事長に若い人への配慮をもとめた。これは選挙目当ての政治的発言とみるのでなく、女性をふくめた国民のおおくの気持を代弁したとみるべきと思う。この論文を読んで科学者の厳しい目を理解できた。研究不正を許すつもりはないので、小保方氏は、わたしがすでに述べてるように自業自得の世界をあるいてくしかないと思う。しかし理研が小保方氏を早々に切りすてた態度、たくさんの客観的データ、物証があるにもかかわらず、真相解明をしぶり、外部の批判に引きずられるような姿勢を見ると、小保方氏への一抹の同情と、自己保身にはしる組織の不公平さを感じてることをわかってほしいと思う。さて、これからである。

** 3) 科学界で模擬裁判をひらいて真相を追及したら
小保方氏はSTAP細胞を捏造したという告発をおこなう。これを担当する検察官を科学者からだす。また小保方氏を弁護する弁護人も科学者からだす。その主張を公平にきき、反論をうながして、最後に判断をしめす判事も科学者からだす、という模擬裁判である。詫摩氏の論文の最後の部分を読むと真相解明にいたらない無力感が感じられた。わたしは、まだまだ真相にせまる努力はできると感じてる。さらに、小保方氏だけを裁判に引きずりだすのは気の毒に思う。

理研は真相解明をさまたげてた。あるいは若手研究者の育成を放棄してた。あるいは杜撰な研究管理を放置してた。こんな告発をもとに模擬裁判をしたらどうか。

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