SSブログ

橋下市長、国連決議に言及 [慰安婦問題]

yasuhei_arameyama.gif

橋下市長が朝日の慰安婦報道に発言した。内容のある面白いものと思う。産経のネット記事で見た。その論旨は次のとおりだ。

1) 朝日は報道記事を撤回したが、それは言論機関のやりとりの結果だった。政府が強制的に修正させたわけでない。言論の自由がみとめられている社会でよい結果だった。

2) しかし朝日は強制性という点では、従来の意見はかえてない。その考えはいいが、ここでは、広義の強制性と狭義の強制性が問題となってる。このような議論は不毛だ。2000年に採択された国連安保理の1325号決議の11項にある問題として、議論すべきである。

3) ここでは、戦場における性暴力を問題としてる。そこでは、不処罰、恩赦の適用を否定してる。国連の人権委では、日本の慰安婦問題をこの性暴力として非難してる(らしい)。

4) 朝日の記事撤回において、まるで人攫(さら)いのように軍が女性を強制した事実は否定された。すると、そうではない性暴力が問題となる。国際的に問題とされる決議に規定されている性暴力を問題にすべきである。

5) 自分(橋下市長のこと)は、日本の問題は決議に該当する性暴力と考えないが、議論の余地はみとめる。だが、日本の慰安婦を該当するとするなら、それと同様の態様の他国のそれらも問題とすべきだ。その議論もないまま、日本だけが非難されてる(らしい)。これは不当だ。

こんなものだった。しっかりした論理である。とかく情にうっえがちなこの国の政治家と一味違うものだ。その結論もふくめ、論理に納得できた。だが、わたしにもすこし言わせてほしい。すこし長くなるがおゆるしいただきたい。

橋下さんは法律家である。国際法も国内法も、憲法も、さらに国連決議の拘束力も、2000年に採択された決議を60年もさかのぼる事実に適用するという法的問題も承知の上、政治家として国民にうったえておられると思う。それをさておいて、わたしが言うことだ。まず、国連決議である。

国連決議1325号の概要
事項 まとめ
前振り 関連決議に言及などして、本題の決議の意義や内容をたしかなものとしてる。
想起し(1999年8月25日付決議1261号(1999)、1999年9月17日付1265号(1999)、2000年4月19日付1296号(2000)、2000年8月11日付1314号(2000)、および関連する議長声明を想起し、
想起し(以下略)
想起し(以下略)
留意し(以下略)
表明し(以下略)
認識し(以下略)
強調し(以下略)
再確認し(以下略)
強調し(以下略))
留意し(以下略)
認識し(以下略)
認識し(以下略)
留意し(武力紛争が女性および女児に与える影響に関するデータを集積する必要に留意し)、この後から決議事項がつづく。
決議事項 1.紛争の予防、管理、解決に向けた活動を行う国内・地域・国際組織および機関のあらゆる意思決定レベルにおいて女性の参加がさらに促進されるよう加盟国に促す。
2.(以下略)
3.(以下略)
4.(以下略)
5.(以下略)
6.(以下略)
7.(以下略)
8.(以下略)
9.(以下略)
10.(以下略)
11. すべての国家は、ジェノサイド、人道に対する罪、女性・少女に対する性暴力を含む戦争犯罪の責任者への不処罰を断ち切り、訴追する責任があることを強調する。またこれらの犯罪を恩赦規定から除外する必要性を強調する。 12.(以下略)
13.(以下略)
14.(以下略)
15.(以下略)
16.(以下略)
17.(以下略)
18.上記事項に関し、積極的に把握しつづけることを決意する。


ついで、冷戦後の国際紛争の表をしめす。冷戦後にしたのは2000年の決議との関連からだ。

国際紛争
時期 概要
1989年~1990年 エチオピア内戦
1989年~1996年 - リベリア内戦
1990年~1994年 ルワンダ紛争
1990年~1991年 湾岸戦争
1991年~2001年 シエラレオネ紛争
1991年~2000年 ユーゴスラビア紛争
1991年 十日間戦争(スロベニア独立戦争)
1991年~1995年 クロアチア戦争
1992年~1995年 ボスニア紛争
1999年~2000年 コソボ紛争
2001年 マケドニア紛争
1991年~2001年 ジブチ内戦
1991年~(継続) ソマリア内戦
1991年~(継続) カザマンス紛争
1992年~(継続) オセチア・イングーシ紛争
1992年~1994年 アブハジア紛争
1992年~(継続) アルジェリア紛争
1994年 イエメン内戦
1994年~1996年 第一次チェチェン紛争
1995年~1998年 ハニーシュ群島紛争
1996年〜1998年 第一次コンゴ戦争
1998年~2000年 エチオピア・エリトリア国境紛争
1998年~2002年 第二次コンゴ戦争(アフリカ大戦)
1998年~2001年 ポソ宗教戦争
1999年~2009年 第二次チェチェン紛争
1999年 東ティモール紛争
1999年 カルギル紛争
2000年~(継続) インドネシア紛争
2001年~(継続) アメリカのアフガニスタン侵攻(対テロ戦争)
2001年~(継続) パキスタン紛争
2002年~2003年 コートジボワール内戦
2003年 リベリア内戦
2003年~2010年 イラク戦争・Category:イラク戦争
2003年~(継続) ダルフール紛争
2004年~(継続) サリン紛争
2004年~(継続) タイ紛争
2004年~(継続) ワジリスタン紛争
2006年 東ティモール内乱
2006年 イスラエルのガザ侵攻・レバノン侵攻
2006年 エチオピアのソマリア侵攻
2006年~2009年 スリランカ内戦
2008年 第二次南オセチア紛争(グルジア紛争)
2008年~2009年 イスラエルのガザ紛争
2011年~(継続) シリア内戦


2000年にかかわりそうな紛争をとった。長くなった。ここで性暴力がどれだけ発生したのだろう。さて、わたしの感想である。2000年の決議を60年もさかのぼって遡及適用するのはあまりも乱暴である。女子挺身隊を誤解、あるいは曲解し性奴隷とでも妄想したかもしれない。日本はそんな異常な国でない。遡及適用は無茶だ。

それでもなお問題とするなら、橋下さんの主張のように、日本のみならず各国がおこした戦争において生じた性暴力を問題にすべきだ。さらに遡及する時期をどんどんのばしてゆけば、どうなるのか。まったく不毛な議論だ。その不毛さと、あらためて2000年の決議の時期からせばめてみた紛争と戦争。そこにおきたであろう性暴力を比較すべきだ。この目の前にある性暴力の問題こそ取りくむべき問題だと思う。で、結論である。

決議にいう性暴力は抽象的である。その段階にとどまっていては、現実の犠牲となった女性をすくう実効性はあやしい。決議が言及してる決議などにヒントがあるかもしれない。わたしの記憶ではユーゴスラビアの紛争後、欧州で裁判があったと記憶してる。アフリカの紛争は常態みたいだ。最近、修道女3人が性暴力の犠牲となったという記事を見た。その背後におおくの性暴力がかくれてるように、思えてならない。イスラム国が女性を誘拐し、強制的に結婚させたとか、売買したとかいう。とくに結婚の事例は、女性側の合意が大なり小なり存在する。強制性は抽象的な議論でなく、具体的な事例の積み重ねにより、あきらかとなるだろう。日本も被害者意識ばかり振りまわさず、今ある問題の解決に智慧をだした方がよい。

(参考)
国連安全保障理事会決議1325号 2000年10月31日採択<全18項目>

安全保障理事会は、

1999年8月25日付決議1261号(1999)、1999年9月17日付1265号(1999)、2000年4月19日付1296号(2000)、

2000年8月11日付1314号(2000)、および関連する議長声明を想起し、

また2000年3月8日の国連女性の権利と国際平和デーにおける議長の記者発表声明(SC/6816)を想起し、

北京宣言及び行動綱領(A/52/231)および第23回国連特別総会「女性2000:21世紀に向けたジェンダー平等、開発、平和」成果文書(A/S-23/10/Rev.1)におけるコミットメント、とりわけ女性と武力紛争に関する事項を想起し、


国連憲章の目的および原則、そしてその下における、国際平和と安全保障を維持するという安全保障理事会の主要な責任に留意し、


民間人、とりわけ女性と子どもが、難民や国内避難民を含む、武力紛争による被害者の圧倒的多数を占めており、また、ますます戦闘員や武力装置の標的とされていることに対する懸念を表明し、


これが結果的に持続的な平和と和解におよぼす影響を認識し、

紛争の防止および解決と平和構築における女性の重要な役割を再確認し、平和と安全の維持および促進における女性の平等な参加と完全な統合、紛争予防と解決に関わる意思決定における女性の役割を高める必要を強調し、

女性および女児の権利が紛争中また紛争後も守られるよう国際人道法および人権法を十分に実施する必要を再確認し、

地雷の除去および地雷に関する意識向上プログラムを促すうえで、あらゆる関係者が女性および女児の特別なニーズを考慮するよう保障する必要を強調し、

平和維持活動においてジェンダーの視点を早急に主流化する必要を認識し、またこのうえでは多面的平和支援活動におけるジェンダー視点の主流化に関するウインドホーク宣言およびナミビア行動綱領(S/2000/693)に留意し、

紛争下における女性および子どもの保護、特別なニーズおよび人権に関し、すべての平和維持活動従事者に対する特別研修について述べた2000年3月8日理事会議長による記者発表声明における勧告の重要性を認識し、

武力紛争が女性および女児に与える影響についての理解、また女性および女児を保護し和平プロセスにおける完全な参加を保障する効果的な制度の整備が、国際平和と安全保障の維持および促進に重大な貢献をなしうることを認識し、

武力紛争が女性および女児に与える影響に関するデータを集積する必要に留意し、

1.紛争の予防、管理、解決に向けた活動を行う国内・地域・国際組織および機関のあらゆる意思決定レベルにおいて女性の参加がさらに促進されるよう加盟国に促す。

2.紛争解決および和平プロセスにおける意思決定レベルに女性の参加を拡大することを求める行動戦略計画(A/49/587)を実施するよう国連事務総長に奨励する。

3.よりよい事務所形態を追求するために、より多くの女性を特別代表や使節として任命するよう事務総長に促す。そのために人材登録名簿を定期的に更新し、よき人材を事務総長に提供するよう加盟国に求める。

4.国連の現地活動、特に軍事監視、民間警察、人権及び人道に関する活動において女性の役割と貢献が拡大されるよう事務総長に促す。

5.国連安全保障理事会は平和維持活動において、ジェンダーの視点に立った活動が行われることが望ましいことを表明する。適性に応じて現地の活動にジェンダーの要素を取り入れることを保障するよう事務総長に促す。

6.女性の保護、権利、特別なニーズに関して、また、あらゆる平和維持と平和構築の活動に女性が関わることの重要性に関して、研修ガイドラインや資料を加盟国へ提供するよう、事務総長に求める。これらの要素およびHIV/エイズに関する意識の向上に向けた研修を、軍隊および民間警察の国家研修プログラムの中に取り入れるよう加盟国に要請する。さらに、平和維持活動に従事する民間人も同様の研修を受けることを確保するよう事務総長に求める。

7. 加盟国に対し、国連女性基金や国連児童基金、国連難民高等弁務官事務所、その他の関連基金やプログラムによって行われているジェンダートレーニングの努力に対して、資金的、技術的および事務所体制強化に向けた支援を自主的に拡大するよう求める。

8.和平協定の交渉および実施に際しては、全ての関係者がジェンダーの視点を取り入れることを求める。

その取り組みには、以下の事柄が含まれる。

(a)紛争後の帰還、再定住、社会復帰、社会への融合、再建のプロセスにおける女性・少女の特別なニーズに留意すること

(b)紛争解決のために、現地女性による平和のためのイニシアティブ、先住民による紛争解決のプロセス、和平協定の実施においてあらゆる機関の中に女性が関わることを支援する方策をとること

(c)特に憲法や選挙制度、警察、司法に関わる事柄において、女性や少女の人権を擁護し尊重することを保障するための方策をとる。

9.武力紛争に関わるあらゆる当事者に対し、市民としての女性および少女の権利と保護に関する国際法、とりわけ1949年のジュネーブ条約および1977年の追加議定書、1951年の難民条約および1967年の追加議定書、1979年の女性差別撤廃条約および1999年の選択議定書に関する2000年10月31日安全保障理事会プレスリリースSC/6942第4213会議、1989年の子どもの権利条約および2000年5月25日の選択議定書等を十分に尊重し、さらに国際刑事裁判所ローマ規定における関連条項についても留意するよう求める。

10.武力紛争に関わるあらゆる関係者に、ジェンダーに基づく暴力、特にレイプその他の形態の性的虐待、また武力紛争下におけるその他のあらゆる形態の暴力から、女性や少女を保護する特別な方策をとることを求める。

11.すべての国家は、ジェノサイド、人道に対する罪、女性・少女に対する性暴力を含む戦争犯罪の責任者への不処罰を断ち切り、訴追する責任があることを強調する。またこれらの犯罪を恩赦規定から除外する必要性を強調する。

12.武力紛争に関わるあらゆる当事者に対して、難民キャンプおよび定住地の市民的および人道的性格を尊重し、これら設備のデザインを含めて、女性および少女の特別なニーズを考慮するよう呼びかける。安全保障理事会はさらに、1998年11月19日の1208号決議を喚起する。

13.武装解除、動員解除および復興計画に携わるあらゆる関係者に対し、元戦闘員の女性と男性とでは異なるニーズがあることに留意し、またその被扶養者たちのニーズにも考慮するよう奨励する。

14.国連憲章第41条項に基づく措置の適用に際しては、適切な人道的免責を考慮し、女性および少女には特別なニーズがあることをも考慮の上、民間人全体への影響について考慮すべきであることを再確認する。

15.安全保障理事会は、ジェンダーに基づく配慮と女性の権利を考慮しつつ、任務を遂行することを表明する。これらは、現地および国際女性団体との対話等をも通じて行われる。

16.事務総長に対し、武力紛争が女性および少女に与える影響や、平和構築における女性の役割、和平プロセスと紛争解決におけるジェンダーに関する側面の研究を実施するよう招請する。またさらに、安全保障理事会に研究結果を報告し、すべての国連加盟国がこの報告を活用できるようにするよう招請する。

17.事務総長に対し、平和維持活動やその他の女性や少女に関わる活動におけるジェンダー主流化の進展について、必要に応じて安全保障理事会への報告に盛り込むよう求める。

18.上記事項に関し、積極的に把握しつづけることを決意する。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。